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商号の使用が「自由化」されたわけではない

株主の相続人から株式を買い取るには?

出向中の社員がセクハラ。出向先、出向元の責任は?

熊本県弁護士会所属 桜樹法律事務所

大正13年の甲子(きのえね)の年にできた大甲橋

 

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商号の使用が「自由化」されたわけではない平成18年3月号掲載

Q: 今回、法律の改正によって、同じ市町村内で同一商号の登記ができるようになるという話を聞きました。当社と同一の商号を使用する会社が出てきた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。

A:現在の商法では、他人が登記した商号については、同じ市町村内において同一営業のために、同一の商号を登記することができないこととされています。

この規定は、登記された商号を保護しようとするものですが、市町村が異なれば(隣町であっても)同一商号の登記ができるのですから、商号の保護といってもたいした効果はありませんでした。むしろ、この規定があるために、会社設立に際して、商号調査や登記官の審査に多くの時間や手間がかかり、さらには、いわゆる「商号屋」から商号を買い取るために余計な出費をさせられるというケースも発生していました。

そこで、今年の5月に施行が予定されている「(新)会社法」では、現行商法の規制が緩和され、同じ市町村内であっても、住所さえ異なれば、同一商号の登記ができるようになりました。

ただし、このことによって、同一商号や類似商号の登記や使用が全く自由になったわけではありません。すなわち、「(新)会社法」でも、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある商号を使用することは禁止されており、このような商号の使用によって営業上の利益を侵害されるおそれのある会社は、相手方に対して侵害の停止又は予防を請求することができると規定されています。

また、使用された商号が世間によく知られているものであるとき等には、「不正競争」として、不正競争防止法上の差止め請求や損害賠償請求の対象にもなります。

したがって、もし、あなたの会社の商号と同一または類似の商号が他人によって使用される場合には、以上のような対抗措置を検討することになります。

なお、「(新)会社法」は、これまで非常に分かりにくかった会社法を、体系的・全面的に見直したものです。株式会社と有限会社との統合、最低資本金制度の見直し、合同会社の新設等、利用者の視点に立った見直しや、会社経営の機動性・柔軟性の向上、会社経営の健全性の確保に関する改正点を含んでいます。

この改正法の内容については、この連載のなかでも、トピックのいくつかをご紹介していこうと思っています。

★キーワード「新会社法と商号の登記・使用」

新会社法では、同じ市町村内でも住所さえ異なれば同一商号の登記ができるようになります。ただし、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある商号の登記・使用は禁止されています。

株主の相続人から株式を買い取るには?平成18年12月号掲載

Q:当社は株式の譲渡制限をしている非公開会社です。最近、株主の1人が亡くなり、相続人が株式を承継しました。当社としてはこの際、相続人から株式を買い取ってしまいたいのですが、相続人が株式を手放さない場合、何か方法はないでしょうか。

A:今年の5月に施行された新会社法で、相続によって譲渡制限のある株式を取得した者に対して、会社が当該株式を売り渡すよう請求できる制度が設けられました。
この売り渡し請求の制度によれば、たとえ相続人が売り渡しを拒んでも、会社が株式を買い取ることが可能です。
以下に具体的な手続きをご説明しましょう。
売り渡し請求の制度を導入するためには定款の定めが必要です。そこで、まず株主総会でこの旨の定款変更決議をします。この決議には議決権の過半数を保有する株主の出席と、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(これを特別決議といいます。)。
次に、やはり株主総会の特別決議で、売り渡し請求する株式数と相手方(相続人)の氏名などを決議します。
その上で、相続人に対して売り渡しの請求をします。売り渡し請求ができるのは会社が相続を知ってから1年以内とされていますので注意してください。
売り渡し請求した場合の売買価格は、会社と相続人との協議によって定めることになりますが、協議が整わない場合は、売り渡し請求した日から20日以内に裁判所に対して売買価格決定の申し立てをすることができます。
この期間内に申し立てがないときには売り渡し請求は無効になるのですが、期間内に申し立てをすれば、裁判所が売買価格を決定してくれます。
つまり、この売り渡し請求の制度によれば、相続人が売り渡しを拒んでも、また売買価格について協議が整わなくても、会社は裁判所が決定した価格で相続人から株式を買い取ることができるわけです。
以上、相続人の例でご説明しましたが、この売り渡し請求の制度は、好ましくない者が株主となることを防ぎたいという非公開会社のニーズに応えるものであり、相続のほか、包括遺贈や合併などによって株式を一般承継した者に対しても適用があります。

★キーワード「新会社法と株式売り渡し請求制度」

新会社法では、相続により譲渡制限のある株式を取得した者に対し、当該株式を売り渡すよう請求できる制度が設けられました。相続のほか、包括遺贈や合併などで株式を一般継承した者にも適用されます。

出向中の社員がセクハラ。出向先、出向元の責任は?

平成19年7月号掲載

Q:当社からA社に出向中の社員(])が、A社の女性社員(Y)にセクハラするという事件が発生してしまいました。職場外での飲み会で]がYに抱きついたり体を触ったりするなどしたということです。A社や当社に責任が発生することがあるでしょうか。

A:まずA社の責任について考えてみましょう。民法715条は被用者が事業の執行について第三者に損害を与えた場合には使用者も損害賠償責任を負うこととしています(使用者責任)。本件では、職場外の飲み会でのセクハラということですから、「事業の執行について」と言えるかどうかが問題となりますが、判例は一般に上司たる地位を利用してセクハラがなされた場合には使用者責任を認める傾向にあります。したがって、XがA社内でYの上司にあたり、そのような地位を利用してセクハラに及んだという場合には、A社はXの使用者としてYに損害賠償責任を負うことになります。


それでは御社の貴任はどうでしょうか。使用者責任が認められるためには使用者と被用者の関係(使用関係)が認められることが前提であり、この使用関係は実質的な指揮監督関係の有無によって決まります。出向社員は出向先の業務命令や配転命令等に服し、出向元との間の実質的指揮監督関係が認められることは少ないと考えられますが、もし、御社とA社との関係が極めて緊密で御社がXの日常の業務について指示をしていたというような事情があれば、実質的指揮監督関係ありとして御社にも使用者責任が認められる可能性があります。


セクハラの間題については、最近は使用者責任の間題にとどまらず、セクハラを防止し働きやすい職場環境を保つように配慮することは企業の義務であるとして、企業の労働者に対する債務履行責任の間題と捉える考え方が強くなってきています。


男女雇用機会均等法21条も、事業主はセクハラ防止のため雇用管理上必要な配慮をしなければならないと規定しているところです。今後、セクハラに対する企業の責任追及がますます厳しいものになっていくことが予想されます。雇用管理、職場環境整備が極めて重要です。厚生労働省から企業向けセクハラ防止対策チェックリストも公表されていますので、参考にされてはいかがでしょうか。

★キーワード:セクハラ防止のための配慮は企業の義務

セクハラを予防し、働きやすい職場環境を保つように配慮することは企業の義務。セクハラに対する社会の目がますます厳しさを増す中、雇用管理、職場環境の整備が極めて重要になります。