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会社は、起業者や社長の個人所有物ではない!

一定の義務を課されるのは「個人情報取扱事業者」

コンプライアンスと守秘義務の免責

熊本県弁護士会所属 桜樹法律事務所

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会社は、起業者や社長の個人所有物ではない!平成18年1月号掲載

Q:私の会社は、景気の低迷による売上高の減少と取引先の倒産の影響もあって、資金繰りが次第に困窮するようになっています。今すぐ行き詰まるという訳ではありませんが、何とか倒産しないで、会社の建て直しを図りたいと考えています。

 民事再生手続きということをよく耳にするのですが、この手続きをとった場合、社長の私は身を引かなければならないのでしょうか。また、倒産した取引先会社の社長から懇願されて、私の一存で回収見込みに疑問はありましたが、多額の融資をしております。私の責任は問われるでしょうか。

A:民事再生法は、中小企業や個人事業者などを念頭に置きながら大企業や一般消費者もその利用ができるようにした、いわば再建型の倒産処理手続の一般法としてつくられています。また会社などの企業についてみれば、その企業が倒産の危機に直面し、またはその危機に陥る恐れがあるが、事業継続し再生することが可能と考える場合は、原則として従前の企業経営者が継続して事業経営することが認められています(民事再生法38条、以下、単に法という)。

 従って、社長さんが身を引く必要はありません。ただし、その場合は、もちろん債権者のためにも公平・誠実に職務を果たさなければなりませんし(法38条)、裁判所や監督委員による監督を受けます(法54条以下)。

 このように一定の監督を受け、また義務を課されることはあります。従って、民事再生手続きをとる以上は、より一層厳しい姿勢で企業経営するとともに、再建への努力をする必要があります。

 次に、回収見込みに疑問のある多額の融資についての責任ということですが、取締役は、会社に対して善菅注意義務を負っており(商法254条3項、民法644条)、さらに法令や定款の定め、総会決議等を遵守し、会社のために忠実にその職務を遂行しなければなりません(商法254条の3)。 前述の通り、民事再生手続きでは原則として会社の役員が、従前の経営権を維持したまま事業の再生を図ることが認められていますが、その手続きの中では、債権者は自己の権利については減免という負担を強いられます。他方、事業の破たんについて、経営者として、また役員として、前述の善管注意義務や忠実義務に反する行為があった場合は、役員としての責任をとってもらわなければ、深刻なモラルハザードを生ずるでしょう。

 そこで、民事再生法は、このような役員の責任を簡易にかつ迅速に追及できる手続きを用意しています。すなわち、役員の損害賠償責任を追及するために、損害賠償請求権の査定の申し立てとそれに対する裁判という制度です(法143条以下)。また、その実効性を確保するために、法人の役員の財産に対する保全処分という制度もあります(法142条)。

 従って、回収見込みに疑問を抱きつつ多額の融資を、しかも社長の一存で決定して実行したということについては、その責任を問われる可能性が高いと考えられます。

★キーワード「民事再生手続における会社役員の立場」

ワンマン社長は、はだかの王様にならないようにしましょう。会社内の意思疎通がうまくいかないと、会社の欠点は見えてきません。会社の経営状況は常に厳しい目でチェックし、早めの対応をとることが肝心です。役員は謙虚に、かつ誠実に職務に専念してください。

一定の義務を課されるのは「個人情報取扱事業者」平成18年10月号掲載

Q:最近、有名企業からの個人情報の流出・漏えい事件が度々発生しています。個人情報保護法が制定されたと聞いていますが、企業経営者としては、個人情報の保護についてどのような義務が課せられたのでしょうか。

A:最近の高度情報通信社会の目覚ましい進展に伴って個人情報の利用が著しく拡大していることを背景として、この個人情報が不適切に取り扱われると、膨大な数の個人の権利利益が瞬時かつ容易に侵害されることになります。そこで、個人情報の適正な取扱いに関して、国や地方公共団体の責務等を明らかにすると共に、個人情報を取扱う事業者に対しても一定の遵守するべき義務を定め、個人の権利利益を保護する目的で、個人情報の保護に関する法律(以下、個人情報保護法といいます)が制定され、平成17年4月1日(一部は平成15年5月30日)から施行されています。

 まず、この法律によって一定の義務を課されているのは、すべての企業経営者ではなく、「個人情報取扱事業者」(法2条3項)とされていることです。個人情報取扱事業者とは、国や地方公共団体等を除くほか、政令で定める一定の者を除くとされています。要するに、個人情報によって識別される「特定の個人の数」の合計が過去6カ月以内のいずれの日においても5千を超えない者は除かれます(法律施行令2条)。したがってこの除外規定に該当としないかぎり、個人情報取扱事業者ということになります。

 次に課される義務ですが、大きく三つに分けられます。ひとつは「個人情報」に関して課せられる義務で、不正手段による個人情報取得禁止(法17条)、利用目的の特定、本人への通知または公表(法15@、18@)、利用範囲の限定(法16@)、苦情の適切、迅速な処理(法31@)などです。次は「個人データ」に関して課せられる義務です。これには個人データの正確、最新内容保持(法19)、安全管理措置(法20)、個人情報取扱従業者や委託先に対する監督(法21、22)、個人データの第三者への提供の原則禁止(法23@)などです。

 最後は、保有個人データに関して課せられる義務です。これは、法定事項(個人情報取扱事業者の氏名・名称・利用目的等)を本人の知り得る状態に置くこと(法24)、本人からの保有個人データ開示要求に対する開示義務(法25)、保有個人データの訂正等要求に応ずるべき義務(法26)等があります。

   これらの義務に違反したときは、主務大臣の勧告(法34@)や命令(法34A、B)を受けることがあります。また、この命令に従わないときは、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることもあります(法56)。

★キーワード「個人情報保護法と企業経営者」

個人情報保護法に対応した社内規定の整備、従業員への研修等を継続的に実施することが肝要です。

コンプライアンスと守秘義務の免責平成19年06月号掲載

Q:最近は、企業の社会的責任という観点から、企業経営におけるコンプライアンス(法令遵守)ということをよく耳にします。このコンプライアンスとの関係で、役貞や従業員などの守秘義務と内部告発ともいわれる通報義務とは矛盾しないのでしょうか。

A:企業が社会的存在である以上は当然に法令を遵守しなければなりません。コンプライアンスの不徹底が企業の存亡に関わることは決してめずらしいことではありません。


  役員や従業員は会社との関係上は委任契約、雇用契約などにより会社に対して一定の守秘義務を負っています。しかし、この守秘義務は絶対的ではなく個別の法令により免責される場合があります (労基法104条、労働安全衛生法卯条、労働者派遣法49条
の3等)。また、裁判では一定の要件の下で労働者の誠実義務の一環として守秘義務達反を免貴された例もあります。さらに、平成18年4月1日から施行されている公益通報者保護法は、まさに最近多発している企業の不祥事 (例ゝえば食品の偽装表示、自動車のリコール隠し等) を背景として、一定の要件の下に役員、従業貞等の企業の内部者が企業内部の事実を通報することを積極的に認め、通報した者(公益通報者) を保護しています。 

 守秘義務が免貴される場合はこのような場合に限られません。企業がコンプライアンス経営を積極的にずるためには、むしろ企業自体が企業倫理規程やコンプライアンス規程、あるいは就業規則の申でコンプライアンス連反の事実を通報する義務を定めたり、相談窓口を企業内に設置したりすることも考えられます。

 このように企業が自ら通報義務を規定することによって、コンプライアンスを徹底することが望ましいでしょう。なお、企業の中には労働者に対して企業に対するコンプライアンス遵守の誓約書の提出を求める例もあるようです。しかし、労働者にその提出義務があるか否かは労働者の思想信条の自由との関係で否定的に解された裁判例がありますが、当該誓約書の内容が思想信条を害するとはいえない客観的合理性があれば提出義務は肯定されるでしょう。以上のように、法律によって企業に対する守秘義務が免除されている場合や、企業自らがコンプライアンスに関する規定を設けている場合は、守秘義務よりもコンプライアンス達反の事実を通報する義務が優先されますので両者は矛盾しないことになります。

★キーワード「コンプライアンス体制の構築」

コンプライアンス(法令遵守)は、企業が社会的に存在する以上、利潤追求という経営目標の大 前提となる理念です。この大前提を失念すれば、企業そのものの存在が失われることを自覚して 下さい。そのためにも、企業内におけるコンプライアンス体制をしっかりとることが肝要です。

 

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