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たわむれに取締役となるなかれ

催告だけでは時効消滅は止められない

手形は完成して取り立てを

熊本県弁護士会所属 桜樹法律事務所

執務室から白川方面を臨む

 

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たわむれに取締役となるなかれ平成17年12月号掲載

Q:私は友人から絶対に迷惑をかけない、名前だけだといわれて友人が経営する会社の取締役となりましたが、最近は放漫経営で会社はうまくいっていない様子です。後日、何らかの責任を取らされる心配はないでしょうか。

A:形ばかりの取締役の責任(名目的取締役)については、裁判所は相当厳しい態度を取っています。
あなたから見れば、自分は頼まれて取締役になっただけだ、社長からは役員としての仕事はしなくていいし、迷惑は一切かけない等と言われて、その通りにした、役員報酬も一切もらっていない、何も悪いことはしていない、と思われるかも知れません。
しかし、会社と取引した債権者にして見ると、役員による法令順守(コンプライアンス)機能が果たされていると期待してよいのではないでしょうか。

ゴルフ会員権の大量募集をした後、倒産した茨城カントリークラブ事件について、東京地裁は次の通り判決しています。
「株式会社の取締役は、代表取締役の業務執行全般を監視し、必要があれば、取締役会を自ら召集するなどして、業務執行が適正になされるようにすべき職責を負うところ、会社経営者との間で、就任に当たって名目上の取締役となる旨の合意がされ、実際にも会社の経営に全く関与せず、また、株主総会や取締役会等の法定機関が全く機能していなかったことは、右職責を免れる理由となるものではなく、むしろその任務懈怠(けたい)を最も明確に示す事情といい得るのであって、この理由は、現実の違法行為に関与した代表取締役等が会社の経営を独断専行していた、いわゆるワンマン会社の場合でも異なるものではない」

会社と取引などが合った者に対する取締役の責任について、商法第266条の3で次のように定められています。

「取締役がその職務を行うにつき悪意又は重大なる過失ありたるときはその取締役は第三者に対してもまた連帯して損害賠償の責に任ず」

名目的取締役の第三者に対する責任については、これを認めない裁判例もありますが、最近は重過失を認定してこれを認める傾向が強くなっています。企業のコンプライアンスがやかましくなっていることと無縁ではありません。

★キーワード「名目的取締役の責任」 

会社の経営が行き詰まって、もはや早晩倒産が必至となってから、単に延命のために融通手形を連発したり、自転車操業を繰り返したりしたのち、倒産したような場合、行き詰まった後に焦げ付いた債権者から、損害賠償を請求されるおそれがあります。

催告だけでは時効消滅は止められない平成18年9月号掲載

Q:取引先から売掛金の回収がままならなくなり5年、全く入らなくなり3年を超えます。抵当権も設定してあるし、長年の付き合いから、無理に取立もできず、毎年当社決算期に請求書は出して催告はしてきました。いよいよ回収の見込がなくなり、不動産を競売して回収したいのですが、大丈夫でしょうか。

A:大丈夫ではありません。商品代金の売掛債権は支払期限到来から2年経過すると、時効によって消滅します。毎年請求していることで、その都度時効が中断して、時効は完成していないと誤解している人が非常に多いのに驚かされます。時効消滅を止めるのは、訴訟の提起、調停申立、競売など公的機関を介しての請求しか役立ちません。公的機関を経ない「催促」は、わずかに時効完成直前にしたものが、その催告書が届いた翌日から6ヶ月延長され、その間に公的手続きを取って初めて時効を止めることが出来るのです。催告を続けていれば時効は延長されると考えていたのであれば、それは誤解です。尚、時効期間内の承認(例 残高確認書を取る)は立派な時効中断理由です。
次に「抵当権があるから安心」だというのも誤解です。抵当債権が消滅すると、抵当権も消滅してしまいます。本件では、裁判所は競売申立は許しますが、配当段階で、抵当不動産の所有者や、後順位の抵当権者などから、時効完成を主張されたら、競売代金からの配当は得られなくなります。
法律の世界では、優しさは自らを害します。
時効消滅させないためには、チ決算期毎に残高確認書をとるかツ時効完成前に訴訟などの公的手続を取るように(余裕がないときは取りあえず内容証明で催促して6ヶ月以内にその手続きを取る)しましょう。

★キーワード「時効完成前に公的手段を」 

催告を続けていても時効は延長されません。余裕がないときは内容証明で催促をし、6ヶ月以内に訴訟などの公的手続きを取るように。




手形は完成して取り立てを平成20年1月号掲載

Q:初めて納入した先から振り出してもらった手形が不渡りとなりました。手形には紹介先の裏書がありましたので、裏書人に支払を求めたところ、振出日が未完成であったから払う義務はないと拒否されました。本当ですか。

A:本当です。手形を銀行に取り立てに出すときは、慎重に点検して完成させて出すよう心掛けてください。
  手形が不渡りとなった場合は、手形の裏書人は振出人に代わってこれを支払う義務があります。ただ、これが認められるために は、期日に銀行を通じて取り立てる際、手形が100%完成している必要があります。質問の案件について、東京高裁(昭57・9・29判決)は次の通り判示しています。
「確定日払いの約束手形の所持人は、振出日白地のまま満期に支払のため呈示したとしても、裏書人に対する手形上の権利を行使することができない」
  以上は振出日欄白地で取り立てに出した案件ですが、受取人欄白地のまま取り立てた場合も結構あると思います。
  この場合も同様に、後日裏書人に対してその責任を追及することは出来ません (昭60・2・27東京高裁判決)。
  なお、この東京高裁の事案は、受取人欄白地のまま取り立てに回して不渡りとなった後に、所持人が白地部分を補充して、裏 書人の不動産の仮差押をしたところ、この裏書人から、仮差押は不法行為にあたるとして、弁護士費用50万円の賠償請求が認められた事案です。不渡りの付箋がついて返却された後に補充してもだめだということになります。
  また、懇願されて期日を延期して満期日を訂正したが、当該訂正個所に裏書人の訂正印がなかった事案なども、裏書人に対する請求が出来ません (東京地裁平17・3・30判決)。
  なお、質問事案の裏書が納入先に対する売掛債権の保証の意味があるかというと、手形交付の際の事情にもよりますが、特段の合意をしたなどの事情のない限り、保証の意味はないとされています。
  手形は慎重な取り扱いを要します。冒頭にあげた高裁の判決は次のように判示しています。
  「…手形取引に関与しょうとする者は、手形が厳格な要式証券であることを当然認識しているか、これを認識して然るべきものである…」

★キーワード「手形は厳格な要式証券」 

期日に銀行を通じて取り立てる際、手形が100%完成してしている必要があります。手形は厳格な要式証券です。銀行に取り立てに出す際は慎重に。