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残業自己申告制について

塚本 侃| 2014年 4月号掲載

 最近時間外労働の取り締まりが厳しくなっていますが、当社は残業について自己申告制を採用しています。自己申告制の手続きに従わない時間外労働を、時間外労働として認めなくても大丈夫でしょうか。

 ホワイトカラーの労働というのは工場での労働と異なり、その成果が必ずしも時間に比例しておらず、もともと厳格な労働時間の管理になじまないという性質から、時間外労働の管理について、従業員本人が時間外労働をしなければならない理由とその時間等を自主的に上司に申告し、事前または事後に上司の承認を得るという方法が行われています。これを「残業自己申告制」と言っています。

 しかしながら、この自己申告制に関しては、一部の事業場で不適正な運用が行われ、割増賃金の不払いや過重な長時間労働等の問題が生じていることは皆さんもご存じのとおりです。そこで、自己申告制を取る場合には、まず自己申告制導入前に労働時間の実体に即した適正な記録と申告を行うことについて十分に職員に説明することが求められており、他方で、労働者の労働時間の実体に即した適正な申告を妨げる目的で、時間外労働時間数の上限設定などしてはなりません。また、その他にも時間外労働手当の定額払い等について妨げる要因となっていないかについても確認する必要があります。そして、自己申告制を導入しても、始業と終業の時刻は把握して記録することが必要ですし、申告された労働時間と実際の労働時間が食い違っていないかについて必要に応じ実態調査をすることも不可欠です。このようなことが守られていれば、残業時間の自己申告制も問題ありません。

 ところで、自主的申請と承認という手続が定められた場合には、自己申告制が適正に運営され、従業員本人に時間外労働申告の自由が保障されている限りは、手続きに従った労働のみを時間外労働として認めるというルールを設定することも一概に違法とはいえません。例えば、残業の申請をした職員に上司が残業内容を質問したところ、特に急を要する業務でなかったので残業しないよう指示し、本人も申請を取り下げたような場合で、その後その職員が時間外労働として割増賃金を請求してきたような時は、手続きに従った時間外労働とは認められないと拒否できます。勿論、残業の適正管理が励行されず、申請なしの時間外労働が常態化している場合は別ですので、その事だけは十分注意して下さい。

「残業自己申告制も、使用者による職員の労働時間管理の一つの手段として認められています。」


残業の適正管理が励行されず、申請なしの時間外労働が常態化している場合は別として、自主的申請と承認という手続きを無視した時間外労働に対しては、割増賃金の支払いを拒むことも出来ます。

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桜樹法律事務所の企業法務

昭和22年生まれ。
熊本高校-中央大学法学部卒。昭和56年弁護士登録。平成15年熊本県弁護士会会長を務めたほか、日本弁護士連合会、九州弁護士会連合会で要職を歴任。熊本県収用委員会会長。

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