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「定昇」等については就業規則等の確認を

塚本 侃| 2007年 8月号掲載

 定期昇給やベースアップは必ずしなければなりませんか。また、毎年賞与を支給している場合には賞与も必ず支給しなければなりませんか。

 使用者が定期昇給やベースアップを義務付けられるのは、就業規則や労働協約で具体的にアップ金額や率等が設定されているときです。単に、「毎年4月1日に定期昇給させる。」とされている場合には、使用者に定昇義務はあるのですが、その義務は抽象的な義務に過ぎず、金額を使用者が決めない限り、労働者は使用者に定昇を前提とした金額を請求することは出釆ません。さらに、「定期昇給させることがある。」とされている場合には、抽象的な義務ですらなく、単なる努力規定にすぎないとされています。この様な場合には使用者に具体的義務はなく、「定昇やベアの凍結」は可能です。

 次に、賞与とは、定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるもので、その支給額が予め確定されていないものをいいます。定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何を問わず賞与とはみなされません。そして、この意味での賞与の支給義務の有無も、就業規則等の定め方によります。「毎年6月と12月に賞与を支給する。」とされている場合には、使用者の義務は抽象的な義務に過ぎませんし、「毎年6月と12月に賞与を支給することがある。」という定めにとどまっている場合には、単なる努力規定ですので、いずれの場合にも労働者はこの様な規定を根拠に賞与を請求することは出来ません。但し、従釆から引き続き毎年6月と12月に賞与を支給してきた場合には、それらの事実も踏まえて、使用者に具体的な義務が生じるのではないかという事が間題となります。しかし、この点については、業績がいかに悪くても賞与を支給するというものでない限りは、たまたま好業績が続いたので支給してきたにすぎない場合として具体的な義務にはなりませんし、また、従前前年度実績を下回らない額が支給されてきた場合でも、それだけでは具体的な義務にはならないと考えられています。

「定昇等と就業規則等の内容」

定期昇給、ぺ-スアツプあるいは賞与の支給を使用者が義務付けられるのは、就業規則や労働協約で具体的にその金額や率等が設定されている場合です。

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桜樹法律事務所の企業法務

昭和22年生まれ。
熊本高校-中央大学法学部卒。昭和56年弁護士登録。平成15年熊本県弁護士会会長を務めたほか、日本弁護士連合会、九州弁護士会連合会で要職を歴任。熊本県収用委員会会長。

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