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無期転換申込権

塚本 侃| 2013年 7月号掲載

 今回の労働契約法の改正で、有期の労働契約として契約したものを、期間の定めのない契約へ転換させるよう申込むことが出来る権利(無期転換申込権)が認められましたが、会社としてはどの様に対応すればいいですか。

 まず、どういう人達に権利が認められたのか考えてみましょう。

 執行役員の場合は、委任契約に基づくから労働者ではないとする考えもあれば、管理職の一種と位置付ける考え方もあります。裁判では、各会社の契約の形式や形態だけでなく、労働関係の実態に基づいて判断されていますので、注意して下さい。

 次に、パート契約の人の中には、無期の労働契約への転換を望まない人もいますが、通算の契約期間が5年を超えれば、無期の労働契約の締結を申し込めますので、有期の労働契約に更新上限の設定を行う等の検討が必要です。

 又、研究成果を確かめるためには5年間以上の期間が必要で、その間何回かの更新を行い、期間満了時に研究成果を評価し、契約を終了させるか否か決めるという非常勤研究員のような場合にも、研究成果を確かめる以前に無期の労働契約の締結を申し込めますので、研究の進め方や研究員の登用方法の変更を検討して下さい。

 最後に、5年間でプロジェクトが終了するということで労働者を採用したところ、プロジェクトが順調に進まず、5年間を経過してしまったというような場合も、無期の労働契約の締結を申し込めますので、プロジェクトが終了すれば雇用終了となることを理解して貰った上で、契約の更新を行うことになります。

 この様に、多くの労働者に無期の転換申込権が認められることになりました。しかし、無期の転換申込権の行使は、労働者の選択に委ねられているので、強要はだめですが、これを行使しないように使用者が頼むことは禁止されていません。

 また、合理的な理由があり、労働者の自由な意思に基づくものであれば、その行使を予め放棄することも可能です。勿論、労働者の判断で事後的に放棄することも出来ます。

 そして、根本的には、使用者と有期契約の労働者の合意で、5年を超えて、有期の労働契約を締結し続けることも可能です。しかし、一旦5年を超えて有期の労働契約が更新されますと、常に無期の労働契約への転換の申込みが問題となりますので、会社では、有期の労働契約の契約期間及び更新に関する管理をきちんと行っていくことが必要です。

「無期の労働契約への転換の申込権」

申込権の行使は、労働者の選択に委ねられており、行使しないように頼むことは出来ます。また、合理的な理由があり、労働者の自由な意思に基づくものであれば、その行使を事前又は事後に放棄することも可能です。そして、使用者と労働者の合意で、無期の契約への転換のリスクを理解して、5年を超えて、有期の労働契約を締結し続けることも可能です。

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桜樹法律事務所の企業法務

昭和22年生まれ。
熊本高校-中央大学法学部卒。昭和56年弁護士登録。平成15年熊本県弁護士会会長を務めたほか、日本弁護士連合会、九州弁護士会連合会で要職を歴任。熊本県収用委員会会長。

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