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従業員がマイカー通勤中に交通事故

馬場 啓| 2008年 4月号掲載

 当社の従業員がマイカー通勤中に物損事故を起こしてしまいました。この社員は任意保険に加入していなかったため、被害者から当社に対して修理代の請求があっています。当社に支払義務があるのでしょうか。

 民法の規定では、使用者(会社)は被用者(従業員)が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うこととされています。例えば、従業員が社用車で取引先に向かう途中に交通事故を起こしたような場合には、会社はこの規定によって被害者に損害賠償責任を負うことになります。

 それでは、ご質問のケースのように従業員がマイカーで通勤中の事故の場合はどうでしょうか。このような事故も「事業の執行について」なされたものと言えるかどうかが問題となります。 この点、裁判例をみると、単に従業員が通勤中だったというだけでは「事業の執行について」とは言えないとして、会社の責任が否定されるのが一般的です。これに対し、マイカーが通勤だけなく会社業務にも日常的に利用され、会社もこれを容認、助長しているような特別の事情がある場合には、「事業の執行について」生じたものとして、会社の責任が認められる傾向にあります。したがって、例えば従業員が外勤業務や出張、作業現場への往復等にマイカーを使うことを会社が認めていた場合や、知っていたのに何の注意もしていなかったような場合には会社の責任が認められることになると思われます。ましてや、会社業務にマイカーを使うことを前提に、会社がガソリン代や駐車場代を負担したり何らかの手当を支給したりしていた場合には会社が責任を免れることは困難でしょう。


 さらに近年は、マイカーを通勤にしか使用していないケースについても、会社がマイカー通勤を前提に通勤手当を支給し、マイカー通勤を積極的に容認していたとして、会社の責任を認めた判決も登場しています。この判決はマイカー通勤が急増していること、交通戦争と称されるまでに交通事故が多発していることなどの社会状況を理由に、使用者としてはマイカー通勤者に対して、普段から安全運転に努めるよう指導、教育するとともに、万一交通事故を起こしたときに備えて十分な保険契約を締結しているか否かを点検指導するなど、特別な留意をすることが必要であるとしています。

 従業員のマイカー通勤について、会社の安全指導・管理が要求される社会情勢になってきていますので注意が必要です。

「マイカー通勤にも安全指導や管理を」

従業員のマイカー通勤についても会社の安全指導・管理が要求されます。万一交通事故を起こしたときに備えて、十分な保険契約を締結しているか否かを点検指導するなど、特別な留意を払う必要があります。

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桜樹法律事務所の企業法務

熊本市出身、1960(昭和35)年6月21日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。95年弁護士登録。2015年度熊本県弁護士会会長、熊本大学法科大学院教授、熊本市情報公開・個人情報保護審議会委員。

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