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株主総会の特別決議を欠く新株発行の効力は?

馬場 啓| 2013年 2月号掲載

 当社は、このたび、第三者割当てによる新株発行を行ったのですが、これについて株主総会の決議を経ていませんでした。
 この新株発行は無効になるのでしょうか。
なお、当社は、株式譲渡に取締役会の承認が必要な非公開会社です。

 公開会社の場合であれば、新株発行は基本的に取締役会の決議で行うことができますが、非公開会社の場合、取締役会決議では足りず、株主総会の決議、それも特別決議(議決権の過半数を有する株主の出席と、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。これは公開会社の株主は通常、持株比率の維持に関心を有していないのに対し、非公開会社の場合、株主にとって、その持株比率は会社支配のために重要な意味を有するからです。

 御社は非公開会社ということですから、株主総会の特別決議がない以上、今回の新株発行は無効ということになります。

 もっとも、新株発行の効力をめぐる裁判例は、一般に、新株発行が無効になる場合を制限する傾向にあり、たとえ発行手続に違法があっても、重大な法令・定款の違反でなければ新株発行自体は有効であるとしています。

 たとえば、会社支配権維持を目的とする場合のような著しく不公正な方法による新株発行、あるいは取締役会の決議すら経ない新株発行であっても、代表取締役が新株を発行した以上は無効とはならないとするいくつもの判例があります。これは新株発行を無効にすると、多数の株式引受人等をめぐる取引の安全が害されることから、できるだけ無効になる場合を制限すべきであるとの考え方によるものです。

 しかしながら、注意しなければならないのは、公開会社と非公開会社では事情が異なるという点です。つまり、前記のとおり、公開会社の場合、株主は持株比率の維持にほとんど関心を有していないので、むしろ取引の安全を優先させるべきといえるとしても、非公開会社においては、株主にとって持分比率が会社支配のために重要な意味を持ちます。取引の安全のためにこのような株主の重要な利益を犠牲にするのは相当でないというべきでしょう。

 このような観点から、昨年(平成24年)4月、最高裁判所は「非公開会社において、株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合、その発行手続には重大な法令違反があり、この瑕疵は上記株式発行の無効原因になる」とする初めての判決を出しました。

 非公開会社の場合、公開会社の場合と同じように考えてはいけないということです。

持分比率に関する株主の利益保護の必要が高い非公開会社では、株主総会の特別決議を欠く新株発行は無効

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桜樹法律事務所の企業法務

熊本市出身、1960(昭和35)年6月21日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。95年弁護士登録。2015年度熊本県弁護士会会長、熊本大学法科大学院教授、熊本市情報公開・個人情報保護審議会委員。

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