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会社と取締役との間での取引の競業

北野 誠| 2011年 7月号掲載

 当社は不動産業を主な事業とする株式会社です。当社は、現在は九州全域を営業エリアとしておりますが、関西地方への進出も企画・準備しており支店等の設立の準備をしているところです。しかしながら当社の取締役であるAが、当社が関西進出に備えて獲得したノウハウや情報を利用して、個人で関西地方にて不動産業を始めてしまいました。当社から取締役であるAに対してどのような責任追及ができるでしょうか?

 取締役が自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引を行うためには、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)においてその取引について重要事実を開示し承認を受けなければなりません(会社法356条1項1号、365条1項)。また、取締役会設置会社においては、競業取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(同法365条2項)。これらのことを会社法上、競業避止義務といいます。

 ここで、「会社の事業の部類に属する取引」とは、実際に会社が行っている取引と目的物(商品や役務等)及び市場(営業区域・流通段階等)が競合するか否かで判断されます。
ただし、異なる区域にであっても、会社が新規に事業を企画し、事業の準備を行っていた場合には、競業避止義務の対象となるものと解されています。

 本ケースにおいては、取締役Aが新規に事業を開始した地域は、現在の御社の営業区域とは競合しませんが、御社が新規事業として関西地方への進出を企画・準備していたとのことですので、取締役Aの行為は競業取引に該当し、競業避止義務違反にあたります。

 取締役が株主総会または取締役会の承認を得ないで取引をした場合には、その取引は任務懈怠として損害賠償責任を負います(同法423条1項、356条1項1号)。そして、本来であれば、会社側が損害の立証をする必要がありますが、会社法は会社側の立証の困難を容易にするため、損害額の推定規定を設けており、その取引により取締役(または第三者)が得た利益の額を会社が被った損害の額と推定するとの規定を置いています(同法423条2項)。
もちろん、会社側で取締役が得た利益以上の損害があることを立証すれば、取締役が得た利益以上の損害賠償請求をすることも可能です。

 また、取締役が、株主総会または取締役会の承認を得ずに競業取引を行ったときには取締役解任の正当な理由(同法339条2項)になりますので、株主総会において解任決議を行うか、当該取締役が大株主であるために解任決議が否決された場合でも少数株主から解任の訴えを請求することができます。

 したがって、本ケースにおいても、取締役Aに対する損害賠償請求や解任決議、解任の訴え等により責任追及が可能です。

「競業避止義務」

取締役は業務執行に関する強大な権限を有しており、また会社の営業上の秘密やノウハウ等を知り得る立場にあります。そこで、会社法は、取締役が会社の利益を犠牲にして自己の利益を図ることを防止するために競業避止義務を規定しています。

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桜樹法律事務所の企業法務

1980年(昭和55年)9月24日生まれ。熊本市出身。済々黌高校-九州大学法学部卒。2003年司法試験合格。2005年弁護士登録。日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会委員。日本司法支援センター熊本地方事務局地方扶助審査副委員長。日本プロ野球選手会公認選手代理人。熊本県弁護士会野球部主将。

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