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従業員の飲酒運転と会社の責任

馬場 啓| 2017年 6月号掲載

 先日、当社の従業員が酒気帯び運転で検挙されました。「酒気帯び運転」とは何をいうのでしょうか。また、これによって当社に責任が発生することがありますか。あわせて、この従業員を懲戒解雇する場合の留意点について教えてください。

 道路交通法は「何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定めています。これが「酒気帯び運転」と言われるものであり、酒類を1滴でも飲んで車両等(自転車を含みます。)を運転すれば、厳密にはこの法律に違反することになります。ただ、すべての「酒気帯び運転」が処罰されるわけではなく、道路交通法上、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15ミリグラム以上の状態で自動車を運転した場合が処罰(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の対象になります。そして、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転した場合には、「酒酔い運転」として、より重く処罰(5年以下の懲役又は100万円以下の罰金)されることになります。

 さらに、道路交通法は、2007年の改正で、飲酒運転を行うおそれがある者に対して車両や酒類を提供する行為や、依頼・要求をして同乗する行為も処罰の対象にしました。これによって、運転者以外の者でも処罰の対象とされ得ることになりましたので注意が必要です。

 したがって、お尋ねの件については、従業員が飲酒運転をするおそれがある状況で、御社が社有車を使用させたり、宴席で酒を勧めたりしたような場合には、御社(代表者や担当者等)に道路交通法違反の責任(刑事責任)が発生することがあります。

 また、従業員が飲酒運転の結果、事故を引き起こしたということであれば、相手方に対する損害賠償責任(民事責任)が御社に発生することがあります。社有車であれば運行供用者責任が発生しますし、従業員のマイカーであっても、事業執行との関係によっては使用者責任が発生することになります。

 以上のように、会社に対しても大きな影響を与える飲酒運転ですが、従業員が飲酒運転をしたことを理由に懲戒解雇をするのには注意が必要です。 受注者が下請業者(下請以外の個別契約も含む。)に暴力団関係者が参入していないか把握に努めるとともに、暴力団該当性が疑われる場合には、警察または暴力追放運動推進センターへ相談すること。会社が飲酒運転に対して厳しい態度を示すことは大事ですが、飲酒運転を理由とする懲戒解雇の有効性が争われることも少なくなく、解雇は処分として重すぎるとして懲戒解雇の効力が否定される裁判例もあるからです。「酒気帯び運転」か「酒酔い運転」か、飲酒運転の結果として事故が発生しているかどうか、飲酒の状況・程度、就業規則の内容等々、諸般の事情を総合的に考慮し、慎重に検討する必要があると言えます。

「他人の飲酒運転によって責任が発生する場合がある」

従業員の飲酒運転で会社に刑事・民事上の責任が発生することがある。また、飲酒運転を理由とする懲戒解雇処分には十分な検討が必要。

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桜樹法律事務所の企業法務

熊本市出身、1960(昭和35)年6月21日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。95年弁護士登録。2015年度熊本県弁護士会会長、熊本大学法科大学院教授、熊本市情報公開・個人情報保護審議会委員。

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