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出向中の社員がセクハラ。出向先、出向元の責任は?

馬場 啓| 2007年 7月号掲載

 当社からA社に出向中の社員(Ⅹ)が、A社の女性社員(Y)にセクハラするという事件が発生してしまいました。職場外での飲み会でⅩがYに抱きついたり体を触ったりするなどしたということです。A社や当社に責任が発生することがあるでしょうか。

 まずA社の責任について考えてみましょう。民法715条は被用者が事業の執行について第三者に損害を与えた場合には使用者も損害賠償責任を負うこととしています(使用者責任)。本件では、職場外の飲み会でのセクハラということですから、「事業の執行について」と言えるかどうかが問題となりますが、判例は一般に上司たる地位を利用してセクハラがなされた場合には使用者責任を認める傾向にあります。したがって、XがA社内でYの上司にあたり、そのような地位を利用してセクハラに及んだという場合には、A社はXの使用者としてYに損害賠償責任を負うことになります。
 それでは御社の貴任はどうでしょうか。使用者責任が認められるためには使用者と被用者の関係(使用関係)が認められることが前提であり、この使用関係は実質的な指揮監督関係の有無によって決まります。出向社員は出向先の業務命令や配転命令等に服し、出向元との間の実質的指揮監督関係が認められることは少ないと考えられますが、もし、御社とA社との関係が極めて緊密で御社がXの日常の業務について指示をしていたというような事情があれば、実質的指揮監督関係ありとして御社にも使用者責任が認められる可能性があります。
 セクハラの間題については、最近は使用者責任の間題にとどまらず、セクハラを防止し働きやすい職場環境を保つように配慮することは企業の義務であるとして、企業の労働者に対する債務履行責任の間題と捉える考え方が強くなってきています。
 男女雇用機会均等法21条も、事業主はセクハラ防止のため雇用管理上必要な配慮をしなければならないと規定しているところです。今後、セクハラに対する企業の責任追及がますます厳しいものになっていくことが予想されます。雇用管理、職場環境整備が極めて重要です。厚生労働省から企業向けセクハラ防止対策チェックリストも公表されていますので、参考にされてはいかがでしょうか。

「セクハラ防止のための配慮は企業の義務」

セクハラを予防し、働きやすい職場環境を保つように配慮することは企業の義務。セクハラに対する社会の目がますます厳しさを増す中、雇用管理、職場環境の整備が極めて重要になります。

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桜樹法律事務所の企業法務

熊本市出身、1960(昭和35)年6月21日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。95年弁護士登録。2015年度熊本県弁護士会会長、熊本大学法科大学院教授、熊本市情報公開・個人情報保護審議会委員。

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