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取締役会の簡略化

北野 誠| 2016年 6月号掲載

 当社は、取締役会設置会社ですが、日常の業務に追われ、なかなか、取締役全員で集まって取締役会を開催する時間をとることができません。そこで、取締役会を簡略化する方法がないか教えてください。

【招集手続】
 取締役会を招集するときは、開催日の1週間前までに各取締役に(監査役設置会社では各監査役にも)、招集通知を発する必要があります。この招集通知期間については、定款で短縮することができます。
 また、取締役及び監査役の全員の同意があるときは、招集手続きを経ることなく取締役会を開催することができます。毎月、一定の日時・場所で開催する定例取締役会については、この同意に基づいて招集手続きを省略して開催することができます。
 招集通知の方法については、書面または電磁的方法だけでなく、口頭による方法でも行うことができます。招集通知には、取締役会の日時及び場所を示さなくてはなりませんが、会議の目的事項については、必ずしも通知する必要はありません。

【会議の方法】
 取締役会については、原則として取締役の過半数が出席(定足数)し、出席取締役の過半数をもって決議(決議要件)を行うとされています。定款で定足数及び決議要件を加重することはできますが、軽減することはできません。
 しかしながら、取締役会については、全員が一堂に会する方式だけでなく、テレビ会議方式や電話会議方式による出席も認められます。なお、その場合、取締役会議事録には、出席の方法を記載する必要があります。

【決議方法】
 取締役会設置会社では、定款で定めれば、取締役が取締役会の決議の目的である事項につき提案をし、取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(かつ、監査役設置会社においては監査役が異議を述べなかったとき)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすという、いわゆる書面決議制度を設けることができます。なお、同意の書面(又は電磁的記録)は、当該決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く等する必要があります。

【報告の省略】
 取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が、取締役の全員(監査役設置会社では取締役及び監査役の全員)に対して取締役会で報告すべき事項を通知したときは、その事項を取締役会に報告する必要がなくなります。ただし、代表取締役・代表執行取締役による3か月に1回以上の職務執行状況についての取締役会報告については省略できませんので、書面決議や報告の省略の方式を用いる場合でも最低3か月に1回は現実に取締役会を開催する必要があります。

 

「取締役会」

取締役会設置会社において、取締役会は業務執行(対外的・対内的な諸般の事務処理)を決定する非常に重要な機関です。名目だけの取締役を置いたり、取締役会設置会社とはなっていても、実際には取締役会を開催していない会社も見受けられます。
しかしながら、取締役会の重要性に鑑みれば、今回ご説明したような取締役会を簡略化する方法を活用するなどして、省力化してでも取締役会を開催する必要があります。

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桜樹法律事務所の企業法務

熊本市出身、昭和55年生まれ。
済々黌高校-九州大学法学部卒。2003年司法試験合格。2005年弁護士登録。日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会委員。日本司法支援センター熊本地方事務局地方扶助審査副委員長。日本プロ野球選手会公認選手代理人。熊本県弁護士会野球部主将。

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