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家族手当の受給権者は収入の多い方で可

塚本 侃| 2008年 2月号掲載

 最近、女性社員から家族手当の申請の相談が増えていますが、男女差別にならないようにするためにはどのように対応すればいいですか。

 家族手当を支給するにあたり、「主たる生計維持者か否か」 「配偶者の収入が一定額以内か否か」 という2つの基準を併用する会社が多く、「配偶者の収入が一定額以内か否か」 という基準は家族手当が生活補助費的性質を有することから定められたもので、女性差別としては「主たる生計維持者か否か」が問題とされてきました。

 では、「主たる生計維持者」を男女を問わず、「配偶者がいる場合」とすれば問題ないのでしょうか。この点について、女性に対する結婚の強制、或いは独身者差別として、裁判が提起されたことがあります。裁判所は、「具体的な労働の対価でない手当について、その支給要件を定めるにあたり画一的な基準を定めざるをえず、その支給要件を定めた経緯を見ても、その動機、目的及び手続に不当な点は認められない。」 と判断して、婚姻しているか否かを基準とすることは不当でないとしています。しかし、この定め方ですと、夫又は妻のいずれを家族手当の受給権者とするのかという問題が残ります。次に、「主たる生計維持者」 を 「扶養家族を有する世帯主」 と定めたらどうでしょうか。家族手当は生活補助費的性質が強いものですから、その受給権者を一家の生計の主たる担い手とすることには合理的な理由があり、世帯主が生計の主たる担い手であることが多いという社会の実態にもー応沿うものです。しかし、この様な定め方ですと、共働きの場合には一家の生計を夫婦で担っているので、生計の主たる担い手をどちらと判断するのかという問題が残ります。では、「主たる生計維持者」 或いは 「世帯主」を 「夫又は妻のいずれか収入の多い方」 とすることはどうでしょうか。この様な取扱いについても、家族手当の受給権者を夫又は妻のいずれか収入の多い方とするのは実質的に女性差別であるとして裁判が提起されました。しかし、裁判所は、「夫または妻のいずれか収入の多い方」 という基準設定について、「一家の生計の主たる担い手が何人であるかを判定する具体的運用としては明確かつ」義的であるから不当ではない。」 と判断しています。

「家族手当の支給と男女差別」

家族手当の受給権者を決める場合に、婚姻している夫婦或いは夫婦共働きの場合を想定して収入の多い方とする基準を採用しても男女差別にはあたりません。

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桜樹法律事務所の企業法務

昭和22年2月17日生まれ。熊本高校-中央大学法学部卒。昭和56年弁護士登録。平成15年熊本県弁護士会会長を務めたほか、日本弁護士連合会、九州弁護士会連合会で要職を歴任。熊本県収用委員会会長。

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