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外勤手当等は時間外労働の対価として支払うものです。

塚本 侃| 2011年 11月号掲載

 事業場外労働については「所定労働時間(就業規則が定めている労働時間)」労働したものとみなされるので,時間外労働による割増賃金のことは考えなくても良いのですか。

 事業場外労働については,使用者が労働者の労働時間を把握することは困難なので,「所定労働時間」労働したものとみなされています。従って,就業規則が定めている所定労働時間働いたとして,時間外労働の割増賃金の請求は認められません。

 しかし,この場合でも,自分の裁量で訪問先との折衝等にあたっている場合には所定労働時間が来たからといって交渉や説明を打ち切ることは出来ませんし,交通事情で帰社が遅れることもありえますし,事業場外労働の性質上所定労働時間を超えて事業場外労働を行うこともあります。このように予想されるもので,事業場外労働の特徴からはっきり算定できなくても,ある程度起こりうる所定時間外労働というものがありますので,その対価的なものとして,「外勤手当」,「セールス手当」,「営業手当」を支給することは差し支えありません。ただ,後で残業手当の請求を受けた場合のことを考えて,賃金規則等で,上記手当の性質が事業場外の時間外労働の対価的なものであることを定めておきましょう。そうすれば,外勤手当等は時間外手当を支給したものとして計算されます。

 もう一点,事業場外の労働で労働時間を算定しがたい場合の中には,「所定労働時間」の労働で仕事が終わるだろうと考えられるものとは反対に,「所定労働時間」を越えることが予測される事業場外労働もあるということです。この場合にも実際上使用者がこれを適切に管理することには難しいので,所定労働時間を超えることが予想される事業場外労働については,労使がその事業場外労働の労働時間を予め協定した場合には,その協定した時間,労働したものとみなされることになっています。この場合,所定労働時間を超える時間というものが労使協定によりはっきりしていますので,その就業規則の定める所定時間を超過する時間に対しては就業規則や法令に定める割増賃金を支払う必要があります。

「事業場外労働とみなし労働時間」

事業場外労働は,所定労働時間働いたとして,時間外労働による割増賃金は認められませんが,実際上の必要性から,「外勤手当」等を支給しているところもあります。この場合には,賃金規則等で時間外労働の対価的なものであることを定めましょう。

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桜樹法律事務所の企業法務

昭和22年生まれ。
熊本高校-中央大学法学部卒。昭和56年弁護士登録。平成15年熊本県弁護士会会長を務めたほか、日本弁護士連合会、九州弁護士会連合会で要職を歴任。熊本県収用委員会会長。

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